「勾配降下法は、何をしている?」
「学習率って、大きいほどいいの?」
最初はでたらめな答えしか出せなかったAIが、学習を重ねて正解に近づく。その「近づく」を実際に動かしているのが勾配降下法です。数式を使わず、坂を下るイメージで最後まで通します。
勾配降下法とは、AIの答えのズレ(損失)を坂道に見立て、傾きが下る向きへ少しずつ進んで、ズレが最小の谷を目指す学習の方法です。学習とは、この谷下りそのものです。
この記事では、坂を下る考え方から始めて、一歩の大きさ(学習率)が大きすぎても小さすぎてもうまくいかない理由を表で見ます。谷が複数ある「損失地形」を図で開き、勾配を求める誤差逆伝播法までつなげます。G検定のディープラーニング基礎に直結します。
1. 学習は「ズレを測って、小さくする」の繰り返し

AIは最初、何も知らない状態から始まります。だから出す答えは間違いだらけ。そこでまず、答えと正解がどれだけずれているかを数値で測ります。この「ズレの大きさ」を測る関数が損失関数(誤差関数)です。
すると学習の目標が、はっきり1つに定まります。損失関数の値を、できるだけ小さくすること。ズレが縮むほど、答えは正解に近づく。あとは「どうやって縮めるか」だけが問題で、そこに勾配降下法が登場します。
2. 坂を下る——傾きを頼りに谷を目指す
この「足裏で感じる傾き」にあたるのが勾配です。勾配は、損失をどの向きに動かせば小さくなるかを教えてくれます。そして一歩の大きさを決めるのが学習率。この歩幅の選び方が、学習のうまさを左右します。
| 学習率(歩幅) | 起きること |
|---|---|
| 大きすぎる | 谷を飛び越えて反対側へ。行ったり来たりで安定せず、発散することもある |
| ちょうどよい | むだなく谷へ収束していく |
| 小さすぎる | 一歩が小さく、谷に着くまで時間がかかりすぎる |
3. 谷は1つとは限らない——局所最適と大域最適

ここに勾配降下法の難しさがあります。損失の地形は、谷が1つとは限りません。まわりより低いけれど一番ではない谷を局所最適、全体で最も低い本命の谷を大域最適と呼びます。図で見ると一目です。
勾配降下法は足元の傾きだけを頼りに進むので、近くの浅い谷(局所最適)に落ちると、そこから出られなくなることがあります。もっと深い谷が奥にあっても、坂を登り返してまで探しには行けないからです。この「浅い谷に囚われる」問題への工夫が、後で出てくる進み方にゆらぎを持たせる方法につながります。学習を支える確率の考え方は 統計の基礎とは でやさしく補えます。
4. 勾配はどこから来るか——誤差逆伝播法

坂を下るには「傾き=勾配」が要ります。では、その勾配はどう求めるのか。ニューラルネットワークとはのように層と重みが積み重なった仕組みで、それを担うのが誤差逆伝播法(バックプロパゲーション)です。
名前のとおり、向きが逆です。ふだんデータは入口から出口へ流れますが、誤差逆伝播では出力で生じた誤差を、出口から入口へさかのぼる向きに伝えます。そうすることで、それぞれの重みを「どちらへ、どれだけ動かせばズレが減るか」=勾配を計算できます。求めた勾配を勾配降下法に渡し、重みを少しずつ更新する——この往復が学習の一周です。
5. 確率的勾配降下法(SGD)と、次に学ぶ順

もとの勾配降下法は、手元のデータを全部使って勾配を求めます。正確ですが、データが大量になると1回の計算が重すぎます。そこで確率的勾配降下法(SGD)は、データの一部だけで勾配を求め、こまめに更新します。1回あたりは荒くなりますが、軽くて速い。
おまけの効能もあります。一部だけを使うぶん進み方に程よいゆらぎが生まれ、浅い局所最適から抜け出しやすくなります。3章の「囚われ」問題への、実用的な答えです。実際の学習では、一定のまとまり(ミニバッチ)ごとに更新する方法が広く使われています。
学ぶ順で迷ったら、この記事の登場順が近道です。損失関数 → 勾配降下法(学習率・局所最適)→ 誤差逆伝播法(勾配消失)→ 活性化関数。手前が土台になるので、この並びで押さえると、深い学習を支える仕組みは ディープラーニングとは まで一本の線でつながります。
次のステップ
勾配降下法がG検定のどこで問われるかを地図で見たいなら、G検定の試験範囲と勉強法をまとめたガイドでディープラーニング基礎の位置づけを確かめておくと、周辺の用語が整理できます。
学習率や勾配消失の理解が本番で効くかは、G検定 ディープラーニング基礎の問題集で設問を解いて試すのが確実です。