リスクマネジメントとは?4つの対応をやさしく解説

リスクマネジメントとは?4つの対応をやさしく解説

業務リスクの扱い方を整理したいビジネスパーソンのイメージ
「リスクって、結局どう扱う?」
「回避・低減・移転・受容の違いは?」
「優先順位は、どうやって決める?」

リスクの大きさは、たった2つの掛け算で決まります。発生確率 × 影響度——起こりやすさと、起きたときの痛みです。リスクマネジメントとは、目的達成を妨げる不確実な事象を洗い出し、回避・低減・移転・受容の4対応で備える管理活動です。この記事は、その優先順位の付け方を軸に進めます。

 

あらゆるリスクに全力で対応する時間も予算もありません。だから「どれから手を打つか」を決める技術が要る。特定・分析・評価の流れ、4対応の使い分け、そしてマトリクスでの優先順位まで順に開きます。基本情報 科目A マネジメント系に効きます。

 

1. リスクは「確率」と「影響」で測る

リスクを確率と影響度の2軸で測るイメージ

リスクとは、目的達成を妨げる不確実な事象です。「不確実」がポイントで、起きるか起きないか分からないものを、あなたは計画の段階で先に洗い出し、打ち手を準備します。測る物差しは発生確率と影響度の2軸。この2つで、リスクの大きさが決まります。

 

たとえるなら、登山前の備えです。雨に降られる確率(発生確率)と、降られたときの危険さ(影響度)を見比べ、レインウェアを持つ・ルートを変える・そもそも中止する、と手を打ち分けます。確率が低くても命に関わるなら重く備え、確率が高くても軽微なら受け流す。あなたが登山でやっている判断が、そのままリスクマネジメントです。

 

リスクには、損失をもたらす負のリスク(脅威)と、うまくいけば利益になる正のリスク(機会)があります。試験の中心は脅威の管理ですが、新規事業の成功確率を高める「機会の活用」も、広い意味でこの管理に含まれます。

 

2. 特定・分析・評価の3ステップ

リスクを特定・分析・評価する3ステップのイメージ

対応の前に、リスクを見極める工程がリスクアセスメントです。特定 → 分析 → 評価の順に進みます。この順序は崩しません。

 

ステップ やること 主な手段
1. 特定 どんなリスクがあるかを洗い出す 過去事例・チェックリスト・関係者ヒアリング
2. 分析 発生確率と影響度を見積もる 定性評価(高・中・低)/定量評価(金額・日数)
3. 評価 対応すべき優先順位を決める マトリクスへの配置・対応基準との照合

 

いちばん効くのは特定です。ここで見落としたリスクは、その後どれだけ丁寧に分析・評価しても登場しません。存在しないものには備えられないからです。だからチェックリストや関係者ヒアリングで、洗い出しの網を広く張ります。分析では、まず「高・中・低」で大づかみにつかむ定性評価から入り、重要なものほど金額や日数で測る定量評価へ寄せていきます。

 

3ステップの要点は、順序を崩さないことです。評価を先にやろうとしても、特定・分析が済んでいなければ、何を評価するのか決まりません。特定で網を広げ、分析で軽重をつけ、評価で順番を決める——この一方通行が、後の対応をブレさせない土台になります。

 

3. 4つの対応を使い分ける

回避・低減・移転・受容の4対応を使い分けるイメージ

評価したリスクへの打ち手は、4つに整理されます。それぞれ「確率と影響のどちらに、どう効くか」で覚えると、取り違えません。

 

対応 中身 具体例
回避 リスク要因そのものを取り除く 危険な工程をやめる/その機能を実装しない
低減(軽減) 発生確率や影響度を下げる テストを厚くする/バックアップを取る
移転(共有) 保険や委託で別主体に分担する サイバー保険/外部ベンダーへの委託
受容 承知のうえで受け入れる 影響の小さいリスクは対策せず静観

 

IPAシラバスでは「回避・低減・移転・受容」と並びますが、低減は軽減、移転は共有と呼ぶ場合があります。同じものの別名なので、言い換えに惑わされないことが試験対策の要点です。運用の文脈でリスク管理がどう組み込まれるかは ITILとITサービスマネジメントとは でつながります。

 

4対応は「リスクの大きさ」と「対応コスト」の綱引きで選びます。全部を回避できれば安心ですが、予算も時間も有限です。大きいリスクは回避・低減で正面から、小さいリスクは受容で受け流す。この配分の判断こそが、リスクマネジメントの腕の見せどころです。

 

4. マトリクスで「どれから手を打つか」を決める

リスクマトリクスで優先順位を決めるイメージ

複数のリスクを前にしたとき、順番を決める道具がリスクマトリクスです。縦軸に影響度、横軸に発生確率を取り、各リスクを配置します。図で位置と優先度の関係を示します。

 

影響度 発生確率 最優先:回避/低減 受容(様子見) 低減/移転 低減/移転

 

優先順位は、右上から左下へ下がります。あなたが手を打つ順番は、次のとおりです。

 

  1. 右上(高確率 × 大影響): 最優先。回避または低減で正面から潰す
  2. 右下・左上(中程度): 低減または移転を検討する
  3. 左下(低確率 × 小影響): 受容で様子を見る

 

マトリクスのもう1つの効能は、関係者の合意形成です。同じリスクでも、立場によって見え方が変わります。可視化して同じ図を囲めば、判断のばらつきが減る。あなたが現場で使うときは、完璧を目指さず、大きなリスク3〜5件を書き出すところから始めれば十分です。大きな影響度のリスクが現実になっても事業を止めない備えは BCP(事業継続計画)とは で具体化できます。

 

5. 選び分けは、たった一問で決まる

リスク対応の選び分けを整理するイメージ

マネジメント系では、リスクマネジメントは4対応の名前と、マトリクスの考え方が問われます。あなたが握るべき判断の一問は、これです。「そのリスクは、確率と影響のどちらが問題か。そして、そのコストは見合うか」

 

「保険をかける対応は?」なら移転、「そもそもやめる対応は?」なら回避、「発生確率を下げる対応は?」なら低減、「小さいから受け入れる対応は?」なら受容。名前を丸暗記すると、言い換えられた瞬間に迷います。効くのは「何に、どう効く打ち手か」で捉えること。マトリクスで大きさを測り、4対応で打ち手を選ぶ——この2段構えが頭にあれば、選択問題はほどけます。プロジェクト全体の中でリスク管理がどう位置づくかは プロジェクトマネジメントとは と併せて押さえると、マネジメント系の地図がつながります。

 

よく出る引っかけが、低減と移転の取り違えです。低減は自分でリスクを小さくする、移転は別の主体に肩代わりしてもらう。保険や外部委託が出てきたら移転、テスト強化やバックアップが出てきたら低減。あなたが「誰がリスクを引き受けるのか」を見れば、この2つは一瞬で分かれます。

 

次のステップ

マネジメント系のどこにリスクが位置するかを地図で見たいなら、基本情報技術者試験の試験範囲と勉強法ガイド で全体の並びを先に確認すると、学習の順番が定まります。

4対応とマトリクスは、問題で試すと定着します。基本情報技術者 マネジメント系の問題集 で、リスク対応の問われ方を、問題で試しておきましょう。